アメリカの国家機密をリークした、リアリティ・ウィナーに対するFBIの尋問を録音した音声記録を、
ほぼリアルタイムで一言一句再現した実録ドラマ『リアリティ』を観ました。
実録ものという映画の性質からタイトルが「リアリティ」なのかと思えば、人名だったんですね。
Reality 2023年米 82分
ストーリー
2017年、アメリカ。米国家安全保障局(NSA)の契約社員、25歳のリアリティ・ウィナーは、仕事から帰宅すると見知らぬ2人の男性に声をかけられる。彼らはFBI捜査官で、ある事件に関する捜査をしているという。気さくで穏やかな口調で何気ない質問を繰り返す彼らだったが、会話は徐々に不穏な空気を帯びはじめ、リアリティは窮地へと追い込まれていく。
キャスト
リアリティ・ウィナーに『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のシドニー・スウィーニー、FBIのギャリック特別捜査官に『マエストロ:その音楽と愛と』のジョシュ・ハミルトン、テイラー特別捜査官にマーチャント・デイヴィス。
監督は本作の元になった舞台も手掛け、これが長編監督デビューとなるティナ・サッター。
ネタバレ感想
帰宅してまだ車の中に居るリアリティの窓をノックするところから始まる録音テープ。
リアリティを彼女の自宅前で待ち構えていたFBI捜査官が録音したテープを元に、
その時の様子を俳優が演じて再現するという珍しいタイプのドキュメンタリー風の作品。
時折実際のテープ音声が挟まれるのだけれど、俳優の声やトーンがそっくりで、
まるで当事者が再現したかのよう。
リアリティ・ウィナーの罪状は「国家機密の漏洩」。
ドナルド・トランプアメリカ合衆国大統領の誕生は、ロシアのハッカーによる2016年アメリカ大統領選への介入によるものだったとする報告書をメディアにリーク。
逮捕され、個人の情報漏洩罪として史上最長となる懲役5年の刑を言い渡された。
彼女が漏洩したとほぼ確信している捜査官は、
気さくで穏やかな口調で彼女に質問を繰り返す。
屋外でペットやエクソサイズの話をしている時は、まだ笑顔も見せていたリアリティが、
屋内で詳細の質問が始まると、最初は否定していたものの、騙しきれないと判断して自白する。
そのリアリティの心情が観ている側にもしっかり伝わってきて、
自分も尋問されている気分になってドキドキするし、
公開されている録音テープのにある非公開部分になると、
ショッキングな音が鳴り、映像から人物が消える。
この演出で余計にドキドキ感がまして、かなり緊張しました。
漏洩させた理由がお金などではなく、彼女の正義感や愛国心からというのが切なく、
5年の実刑は厳しすぎるのではと思いました。
本当に罰せられるべきはロシア疑惑を起こした人間ではないのかしら。
次の選挙が近いからか、リアリティ・ウィナーは注目されているようで、
『コーダ あいのうた』のエミリア・ジョーンズが彼女を演じる
『Winner』という題名の伝記映画も予定されているらしいです。