日頃目にしている無神経さと同じ 『関心領域』(ネタバレ感想)

日頃目にしている無神経さと同じ 『関心領域』(ネタバレ感想)

今年のアカデミー賞で、『PERFECT DAYS』と国際長編映画賞を争った『関心領域』を観ました。

 

The Zone of Interest 2023年米/英/ポーランド 106分

 

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ストーリー

ナチスドイツ占領下にあった1945年のポーランド。アウシュビッツ強制収容所で所長を務めるルドルフ・ヘスと妻のヘートヴィヒと5人の子供達は、収容所と壁を隔てたすぐ隣の家で暮らしていた。収容所からの音や立ち上る煙などが間近にありながら、一家は満ち足りた日常を送っていた。

キャスト

ルドルフ・ヘスに『ヒトラー暗殺、13分の誤算』のクリスティアン・フリーデル、ヘートヴィヒに『落下の解剖学』のザンドラ・ヒュラー
監督は『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』のジョナサン・グレイザー

ネタバレ感想

カンヌ国際映画祭ではパルムドールに次ぐグランプリに輝き、第96回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞、音響賞の5部門にノミネートされ、国際長編映画賞と音響賞の2部門を受賞。
それほどの話題作なのに、ほとんど情報を入れていなくて、
てっきりドイツの映画だと思っていたし、主人公一家は実在の人物で、監督がリサーチして作ったということなので、
事実ということですよね。

タイトルの「The Zone of Interest(関心領域)」は、第2次世界大戦中、ナチス親衛隊がポーランド・オシフィエンチム郊外にあるアウシュビッツ強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現するために使った言葉だそう。
収容所と壁一枚で仕切った場所に所長宅。
花壇に温室、パティオや、小さいながらもスライダー付きのプールを囲んで楽しそうな子供や大人たち。
壁の向こうには、常に煙が上がっている大きな煙突が立ち並び、
夜も赤々と光が差し込み、銃声や悲鳴が絶えず聞こえてくる。
しかし所長夫妻にはその音や光、煙やおそらく匂いも全く気にならないよう。
(幼い子供達は気にしている様子)
所長にまで上り詰めたルドルフ・ヘスと妻のへートヴィヒ。
ヘートヴィヒの母はユダヤ人の家で働いていたと言っていたので、生まれはさほど裕福ではなさそう。
夫が所長となり、ポーランド人の住民を召使にして貴族のような暮らし。
裕福なユダヤ人が所有していた上等な品が届く日常も当たり前。
罪悪感は微塵もなく、元の所有者の存在など気にもかけない。
自分たちが幸せならそれで良い。苦しんでいる人は目に入らない。
人の本質はこうではないと思いたいけど、
被災地が困っていても、子ども食堂が増えていても、目に入っていない政府もありますもんね。

訪ねてきたヘートヴィヒの母親は、贅沢な暮らしぶりに感心していたのも束の間、
収容所から聞こえてくる音と光にノイローゼ気味になり、逃げるように去る。
その事実も無かったかのようにメモを燃やすヘートヴィヒ。
八つ当たりで「燃やして灰にして撒く」とまで言ってしまう無神経さが恐ろしい。

冒頭・中盤・終盤と、画面が黒・白・赤一色になり音だけが聞こえてくるシーンがあり、
見えないながら画面の背景で何が起こっているのか、想像させる作り。
収容所内の様子は、最後に差し込まれる博物館となっている現在の映像のみ。

子供の寝かしつけにグリム童話を読んでいる時のモノクロ映像は、
ポーランドのレジスタンスが、飢えている囚人のためにリンゴを置いた実話らしい。
含みもいろいろありそうだけれど、最後のルドルフの吐き気はなんなんでしょうね。

 

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