純粋な愛の絆 『トリとロキタ』(ネタバレ感想)

純粋な愛の絆 『トリとロキタ』(ネタバレ感想)

久しぶりのシネマ・ルナティックで『トリとロキタ』を観ました。
ベルギーのダルデンヌ兄弟の作品を観るのは実は初めて。
2022年・第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品、75周年記念大賞受賞作。

 

Tori et Lokita 2022年ベルギー/フランス 89分

 

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ストーリー

アフリカのベナン出身でまだ幼い少年トリとカメルーン出身で10代後半の少女ロキタは、ベルギーへ向かう道中で知り合い、本当の姉弟のような絆で結ばれる。ロキタはなかなかビザが下りず正業に就くことができない。それでも故郷の家族に仕送りするため、危険なドラッグの運び屋としてお金を稼ぐ日々。ある日、仕送りのためのお金を密航の仲介業者に奪われてしまったロキタは、さらに危険な仕事を引き受けることを決意し、ついにトリとも離れ離れになってしまうが…。

キャスト

トリにパブロ・シルズ、ロキタにジョエリー・ムブンドゥ、2人とも映画初出演。
べティムに『アイダよ、何処へ?』のアウバン・ウカイ、ルーカスに『Girl/ガール』のティヒメン・フーファールツ、マルゴにシャルロット・デ・ブライネ、ジュスティーヌにナデージュ・エドラオゴ、フィルマンに『007/スペクター』のマルク・ジンガなど。
監督はジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟

ネタバレ感想

冒頭、少女ロキタが質問されているシーンで始まります。
そのシーンだけで、トリは実の弟ではないのが分かります。
状況説明のないドキュメンタリーを観ているような感覚。
説明がなくとも、2人の状況は徐々に見えてきます。

保護者のいない、未成年の亡命者。
難民の子供の施設で暮らす2人は、実の姉弟でなくとも仲が良くいつも一緒。
冒頭のシーンはビザ取得のための面接。
ビザがないロキタは正規の仕事につけないため、ドラッグの配達などの裏稼業をするしかない。
密航した際の中間業者に搾取されながら故郷の家族へ仕送り
夢はビザをもらい家事ヘルパーの職に就き、トリと2人で暮らすこと。
ささやかにさえ思えることが、現実にはとても難しい。

利用され搾取されるロキタを見ているのが辛い(客商売させられるのではとドキドキ)し、ロキタを助けようと奔走するトリも賢いだけに危なっかしくて、ハラハラしながら見ていました。
上手く悪事を告発して、警察に保護されたりとかしないかな〜と淡い期待を持ちましたが、残念ながら厳しいラスト。

難民というだけで搾取されたり、使い捨てられたり、人として扱われなかったり。
夢を見てやってきた場所が地獄で、それが他所の国のことではない現実。
せめて無関心ではいないようにしたい。

 

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