誰も助けてくれない 『アイダよ、何処へ?』(ネタバレ感想)

誰も助けてくれない 『アイダよ、何処へ?』(ネタバレ感想)

第2次世界大戦後の欧州で最悪の大量虐殺事件である「スレブレニツァの虐殺」の全貌を、女性アイダの視点で描いた『アイダよ、何処へ?』を観ました。
第93回アカデミー国際長編映画賞ノミネート(ボスニア・ヘルツェゴビナ出品)作品。

QUO VADIS, AIDA?
2020年ボスニア・ヘルツェゴヴィナ/オーストリア/ルーマニア/オランダ/ドイツ/フランス/ノルウェー/トルコ

ストーリー

ボスニア紛争末期の1995年夏。ボスニア・ヘルツェゴビナの町、スレブレニツァがセルビア人勢力によって占拠される。
2万5000人に及ぶ町の住人たちは保護を求めて国連基地に殺到するが、中に入れた一部以外はゲート外に溢れていた。
国連平和維持軍で通訳として働くアイダは、セルビア人勢力の動きがエスカレートする中、夫や息子を守ろうとするが……。

キャスト

アイダにヤスナ・ジュリチッチ、他イズディン・バイロビッチ、ボリス・イサコヴィッチ、ヨハン・ヘルデンベルグ、レイモント・ティリなど。
監督は『サラエボの花』でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞したヤスミラ・ジュバニッチ。

ネタバレ感想

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争については、映画でも何度も取り上げられているので、言葉としては知ってはいるのですが内容はよく知らない上に、この映画で取り上げているスレブレニツァの虐殺については知りませんでした。

ホテル・ルワンダ』で描かれたルワンダ虐殺が1994年。今更ながら、同時期にアフリカでもヨーロッパでも大量虐殺が行われていることに戦慄を覚えます。しかも自分が認識していないだけで他にもあるかもしれない。

本作では、国連で通訳をしているアイダの視点で描かれているので分かりやすいし、彼女が愕然とするシーンで見ている我々も衝撃を受けます。
スレブレニツァの市長が国連に対してセルビア人から守ってほしいと訴えたのに対して、自分はただの伝令というオランダ軍大佐。実行されなかったNATOの空爆。
町から逃げた市民を受け入れるはずの国連施設にはスペースも食料も水もトイレも何もかもが足りず、一部の市民しか中へ入れず、市民の目の前でゲートが閉められ、いつ襲われるか分からない恐怖の中外に放置されている市民。
何処からも応援も物資も届かず、八方塞がりお手上げの国連軍。
対して用意周到なセルビア軍は、交渉と称して巧みに国連軍を追い詰め、市民を男女別に選別してバスに乗せ女性と子供はクラダニへ移送。男性は途中で殺されました。8373人の犠牲者の中にはまだ遺体が見つかっていない方も。
自分の家族を守ろうと奔走してけれど叶わなかったアイダ。
後に町へ戻って来たアイダは教師となり子供達を教えています。しかしその子供達の親の中には自分の家族を殺したセルビア軍だった者たちも。子供には罪はないといえ、アイダはどんな気持ちなのか、自分には計り知れません。
自分が彼女の立場だったらどうするかと考えても、何もできないという答えしか出ないのだけれど、この映画は観て良かったと思います。

 

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