山田太一の小説「異人たちとの夏」をロンドンを舞台に映画化した『異人たち』を観ました。
1988年には大林宣彦監督で映画化されています。
All of Us Strangers 2023年英/米 105分 R15+
ストーリー
12歳の時に交通事故で両親を亡くし、孤独な人生を歩んできた40歳の脚本家アダム。ロンドンのタワーマンションに住む彼は、両親の思い出をもとにした脚本の執筆に取り組むため、幼少期を過ごした郊外の家を訪れる。するとそこには、30年前に他界した父と母が当時のままの姿で暮らしていた。不思議に思いつつも、アダムは再度実家に通うことを止められない。その一方で、彼は同じマンションの唯一の住人である青年ハリーと恋に落ちる……。
キャスト
アダムに「SHERLOCK シャーロック」のアンドリュー・スコット、第81回ゴールデングローブ男優賞ノミネート。
ハリーに『aftersun アフターサン』のポール・メスカル、アダムの父に『ロケットマン』のジェイミー・ベル、母に『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』のクレア・フォイ。
監督は『WEEKEND ウィークエンド』のアンドリュー・ヘイ。
ネタバレ感想
山田太一の原作は未読、大林宣彦監督版も見ているのかどうかも曖昧ですが、
亡くなった両親と再会したというストーリーはぼんやりと記憶にありました。
今作、登場人物はほぼ4人しか出て来ません。
主人公のアダムをクィア(ゲイ)にしたことで、より現代的な話になっています。
子供の頃からずっと孤独だったアダム。
30年前には親へカミングアウトも出来ず、学校でいじめられてる事も告げられないまま、
両親は交通事故で突然他界、より一層孤独になり人付き合いを避けて生きてきた。
そんなアダムが、やはり孤独なハリーと出会い、少しづつ心を開いていく。
実家だった場所へ行ってみると、実家も両親も当時のまま存在していて、
再会した両親はアダムより年下なのかもしれないけれど、彼らの前では子供に戻るアダム。
元々若く見えるアンドリュー・スコットだけど、両親といる時の表情が本当に子供で、流石の演技力。
あのモリアーティですし、少し前ならハリー役をやってたのではとも思いました。
そのハリー役のポール・メスカルは、最近よく聞く名前ですが、彼も良かったし、両親の2人ももちろん良かった。
彼らもまた自分達の息子を心配し、子育てが至らなかったと悔やんでいて、
アダムと心を通わせたことでやっと成仏できたのかも。
アダムと両親、アダムとハリー、それぞれ互いに愛し合い、救い救われます。
ハリーが実は〜、というのはなんとなく想像がつきましたが、
アダムのおかげでハリーも旅立てたのだと思います。
人は皆孤独だけど、それが分かっていれば前へ進める。
優しい映画でした。