ようやく当地でも公開となった『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』を観ました。
ペットは犬の風潮があった時代に、絵によって猫の魅力を伝え、今日の猫人気の源となった画家ルイス・ウェインの生涯をベネディクト・カンバーバッチが演じた伝記映画。
The Electrical Life of Louis Wain 2021年英 111分
ストーリー
英国の上流階級に生まれたルイス・ウェインだったが、父が亡くなり母と5人の妹を養うためイラストレーターの仕事を得る。妹の家庭教師のエミリーと恋に落ち、階級差とエミリーが10歳年上であったことから世間や家族からも反対されるが気にせず結婚、田舎へ移り住み幸せに暮らし始める。しかし、エミリーに乳がんが進行していることが分かる。2人は庭で見つけた子猫をピーターと名付け、ルイスはエミリーを喜ばせるために、ピーターやネコをモチーフに描き始める。エミリーに勧められ猫の絵を発表するルイスだったが、3年後エミリーはこの世から去ってしまう。
キャスト
ルイス・ウェインにベネディクト・カンバーバッチ、妻となるエミリーに『蜘蛛の巣を払う女』のクレア・フォイ、妹のキャロラインに『ニューヨーク 親切なロシア料理店』のアンドレア・ライズボロー、サー・ウィリアムに『ほの蒼き瞳』のトビー・ジョーンズ、他タイカ・ワイティティ、ニック・ケーブなど。
ナレーションに『ファーザー』のオリヴィア・コールマン、監督は俳優でもあるウィル・シャープ。
ネタバレ感想
これまでも数多くの実在の人物を演じてきたベネディクト・カンバーバッチ。
『アメイジング・グレイス』(2006)で時の首相ウィリアム・ピットに始まり、有名どころだとジュリアン・アサンジ、アラン・チューリング、トーマス・エジソン、『ブラック・スキャンダル』のウィリアム・バルジャーや『クーリエ:最高機密の運び屋』のグレヴィル・ウィンも実在の人物。
今回新たに加わったルイス・ウェインについては、この映画以前はまったく知らなかったのだけれど、猫の作品で知られるイギリスの画家、夏目漱石の「吾輩は猫である」に登場する絵葉書の作者と言われているとか。
エキセントリックな役どころも得意なベネディクト・カンバーバッチ。
ルイス・ウェインもなかなかの変わり者、そんな彼を落ち着かせ幸せにしたのがエミリーでしたが、たった3年の結婚生活で他界。当時の慣習に逆らってエミリーと結婚したために妹達には縁談が来ず、才能はあっても交渉ビジネスができないルイスだったのでウェイン一家は常に貧しく、妹が病気で亡くなったりと、エミリーが居なくなってからは散々な生活。
自身も精神病を発症し病院へ収容されますが、晩年まで描き続けます。
最後、エミリーのケープの切れ端を見つけ、かつてエミリーと見た光景の場所へ辿り着いたルイス。
その美しい光景に、悲しさをあと押しされてしまった。
3年間の結婚生活だけが彼にとっての幸せだった気がして、切なくなりました。