解剖されたものは真実かそれとも 『落下の解剖学』(ネタバレ感想)

解剖されたものは真実かそれとも 『落下の解剖学』(ネタバレ感想)

第76回カンヌ国際映画祭でパルムドール賞とパルム・ドッグ賞を受賞し、
アカデミー賞でも5部門ノミネートで脚本賞を受賞した『落下の解剖学』を観ました。
スリラーであり法廷劇なのですが、アメリカ映画とはやはり違いますね。
嫌な結末にならないようにと願いながら観ましたが…。

Anatomie d’une chute 2023年仏 152分

 

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ストーリー

フランス、雪深いグルノーブルの人里離れた山荘で、視覚障がいのある11歳の少年が、転落死した父の死体を発見する。最初は事故死かと思われたが、捜査が進むにつれていくつもの謎浮かび上がり、やがてベストセラー作家の妻サンドラが殺人の容疑で起訴される。裁判が始まると、検察の容赦ない追及によって、幸せそうに見えた家族と夫婦の秘密が次々と暴かれていくのだったが…。

キャスト

サンドラに『関心領域』にも出演した『希望の灯り』のザンドラ・ヒュラー、息子のダニエルにミロ・マシャド・グラネール、弁護士のヴァンサンにスワン・アルロー、検事にントワーヌ・レナルツ、他サミュエル・タイス、ジェニー・ベス、サーディア・ベンタイブ、カミーユ・ラザフォード、アン・ロトジェ、ソフィ・フィリエールなど
監督は『ヴィクトリア』『愛欲のセラピー』のジュスティーヌ・トリエ、出演もしている共同脚本のアルチュール・アラリはパートナー。

ネタバレ感想

人里離れた山荘に暮らす一家の息子が転落死した父親を発見。
事故なのか、自殺なのか、それとも他殺なのかを巡り、妻が殺人容疑で起訴される。
さて真相は?という話ですが、結局真実は語られません。
裁判により、夫婦仲や金銭面での内情、息子が視覚障害になってしまった経緯などが次第に暴かれ、
死因や妻の容疑について、陪審員と同じように観客に判断が委ねられます。

亡くなった前夜の、夫婦の激しい口論を夫が録音していたことが分かり、
内容から妻への疑惑が一気に深まります。
彼女はバイセクシャルで浮気歴があり、同じく作家だった夫が思いついたアイデアで書いた小説がベストセラーに。
肉体だけの関係とか、精神的にセックスが不可欠というような事も子供の前で平気で話すところがいかにもフランスって感じ。ダニエルの傍聴をやめさせようとした裁判長が、どうせネットで分かることだから傍聴させて欲しいという願いを聞き入れるあたりも、アメリカだったら有無をも言わせず退去させる気が。

検事の激しい追求に押され気味な弁護士でしたが、
ダニエルの証言で無罪の判決。
弁護士の熱弁より、11歳の少年の言葉に陪審員が動かされるのに納得。
自分は、ダニエルが母を助けるために考えた発言だったと思います。
母の言葉を信じるために実験台にされた犬が可哀想でしたけど、
パルム・ドッグ賞受賞のスヌープ役のメッシ君、演技ご苦労様でした。
委ねられた結末でしたが、嫌な後味ではなくて良かった。

 

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