スリラー以上にドラマとしても見応えあり 『梟ーフクロウー』(ネタバレ感想)

スリラー以上にドラマとしても見応えあり 『梟ーフクロウー』(ネタバレ感想)

2023年の韓国の映画賞で25冠と最多受賞したという歴史サスペンススリラー『梟ーフクロウー』を観ました。
中盤から一気にハラハラドキドキの展開で面白かった。
ただ、観終わった後は、哀しい気持ちで一杯になっちゃいました。

 

The Night Owl 2022年韓国 118分

 

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ストーリー

盲目の鍼医ギョンスは心臓病の弟と二人の貧しい暮らしだったが、修行し宮廷で働けるようになる。弟の病を治すため、黙々と働くギョンスは鍼の腕が良く、宮廷内でも次第に高位な方の施術を任されるようになる。8年間清の人質となっていた世子ソヒョンが戻ってきて、ギョンスに目をかけてくれるようになり、弟の病を治すことができるかに思われた時、ソヒョンは感染症で亡くなってしまう。しかしギョンスはソヒョンが殺されたと知っていた。

キャスト

ギョンスにリュ・ジュンヨル、朝鮮王・仁祖(インジョ)にユ・ヘジン、2人は『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』でも共演していました。
仁祖の息子・昭顕(ソヒョン)世子にキム・ソンチョル、世孫役はイ・ジュウォン。ギョンスの先輩に『パラサイト 半地下の家族』のパク・ミョンフン、仁祖の側室・昭容(ソヨン)をアン・ウンジン、御医イ・ヒョンイクにチェ・ムソン、宰相にチョ・ソンハなど。
監督は本作が長編デビューとなるアン・テジン

ネタバレ感想

“朝鮮に戻った王の子は、ほどなくして病にかかり、命を落とした。
彼の全身は黒く変色し、目や耳、鼻や口など七つの穴から鮮血を流し、さながら薬物中毒死のようであった。”
<仁祖実録>にこう記された史実を、架空のキャラクターを使って膨らませたフィクション。
朝鮮王朝の第16代国王・仁祖(インジョ)の時代。当時の中国・清で人質となっていた仁祖の長男・昭顕(ソヒョン)世子が8年ぶりに帰郷したのも束の間、すぐに亡くなってしまう。
実はソヒョンは病ではなく殺害され、その現場を盲目の鍼医が目撃する。
なぜ盲目なのに目撃できたのか、その後の顛末を追うサスペンススリラー。

実はギョンスは、昼間の陽の光の下では全く見えませんが、
夜にはぼんやりながら見えることを秘密にしていました。
ソヒョンに鍼を打った時ギョンスの秘密がバレますが、
理解し、さらに助けてくれる穏やかで優しいソヒョンの人柄にふれ、
弟の病を治せる希望が持てた時にソヒョンが殺されます。
恩人が目の前で殺されているのを止められないギョンスの衝撃と落胆。黒幕が誰か分かった時の驚愕。夫を殺したのが夫の実の父と知った妻の絶望。

さらにソヒョンの子供にまで魔の手が伸びた時、
見ざる聞かざるで通していたギョンスが叫ぶ真実の訴えが、
切なく哀しい。

ラストの落とし前には、更に哀しくなり、
人間の欲と業の深さに虚しくなりました。
支配階級の損得に下層の者が振り回されるのは、
今も昔も古今東西変わらないのが腹立たしい。

 

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