第95回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネート、2022年ヴェネチア国際映画賞金獅子賞を受賞した
『美と殺戮のすべて』を観ました。
普段ドキュメンタリーはあまり見ない方ですが、ふふふ、ムビチケが当たったのですよ( ̄∇ ̄)ニヤッ
All the Beauty and the Bloodshed 2022年米 121分 R15+
概要
1970年代から80年代のドラッグカルチャー、ゲイサブカルチャー、ポストパンク/ニューウェーブシーンなど、
当時過激とも言われた題材を撮影、その才能を高く評価され一躍時代の寵児となった写真家ナン・ゴールディン。
2023年には、イギリスの現代美術雑誌ArtReviewが発表するアート界で最も影響力のある人物の1位に選出されるなど今日に至るまで世界にインパクトを与え続けている。
2018年3月10日、ゴールディンは多くの仲間たちと共にニューヨークのメトロポリタン美術館の「サックラー・ウィング」で、「サックラー家は人殺しの一族だ!」と口々に声を上げながら「オキシコンチン」という鎮痛剤のラベルが貼られた薬品の容器を一斉に放り始めた。
「オキシコンチン」は「オピオイド鎮痛薬」の一種であり、全米で50万人以上が死亡する原因になったとされる合法的な麻薬。彼女が抗議活動をする理由を、彼女の人生と共に振り返るドキュメンタリー。
監督は『シチズンフォー スノーデンの暴露』のローラ・ポイトラス。
ネタバレ感想
アートにも疎い私は、本作で初めてナン・ゴールディンという写真家を知りましたし、
彼女の写真やスライドショーを見ても、もうひとつピンとこないのですが、
彼女の辿ってきた人生は、なかなかに壮絶でした。
ナンの大好きな姉は、精神病と診断され施設に入っていましたが自殺。
ナン自身も、実家にいては姉と同じ運命を辿ると言われ、家から出され里親や施設を転々。
流れ着いたボストンで、ドラッグクイーンやゲイ、トランスセクシャルな友人達と同居、
一時売春などをして稼いでいた時期も。
友人達がドラッグの過剰摂取やエイズ等で亡くなっていく中、
自身も鎮痛剤として医師から勧められたオキシコンチンの過剰摂取で生死を彷徨ったことから、
美術館に多額の寄付をしているサックラー一族が、中毒性のある製薬事業によって多額の利益を得ていることに抗議。
メトロポリタン、ルーブルなど多くの美術館が、サックラー一族からの寄付を断るようになりました。
AIDSに対する政府の態度の経験から、自分の陣地で自ら立ち上がり、抗議だけでなく被害者の救済活動もする
その行動力と勇気に圧倒されました。