奇跡か悲劇か 『雪山の絆』(ネタバレ感想)

奇跡か悲劇か 『雪山の絆』(ネタバレ感想)

第96回アカデミー賞で国際長編映画賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞の2部門ノミネートの
雪山の絆』をNetflixで見ました。
1972年にウルグアイの空軍機571便がアンデス山中に墜落した遭難事故を描いています。

 

 

La sociedad de la nieve 2023年スペイン 145分 PG12

 

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ストーリー

1972年。ラグビー選手団とその友人や家族40人と乗組員5人を乗せて、チリへ向かっていたチャーター機のウルグアイ空軍機571便が、アンデス山脈中心部の氷河に墜落。飛行機は前後に分断され、乗客45名のうち生存者は29名。あたり一面雪の中、食べ物も防寒着もなく、医学生の努力も虚しく次々と亡くなっていく。そんな想像を絶する過酷な環境のなかに取り残された彼らは、生き延びるために究極の手段を取らざるを得ない状況に追い込まれていく。

キャスト

ヌマにエンソ・ボグリンシック、ナンドにアグスティン・パルデッラ、ロベルトにマティアス・レカルトなど。
監督は『ジュラシック・ワールド 炎の王国』、『インポッシブル』のJ・A(ファン・アントニオ)・バヨナ

ネタバレ感想

実際に起こった1972年のアンデス飛行機事故の映画化。
45名乗っていたチャーター機がアンデス山脈の氷河に墜落。
捜索隊が悪天候のため8日ほどで捜索を中止したにも関わらず、
生存者16人は72日間生き延びました。

この事故は、本作までにドキュメンタリー映画で3本、劇映画として2本作られていて、
1993年制作の『生きてこそ』が有名(自分は未見)。
本作は事故機に搭乗していたラグビー選手団が所属するウルグアイのステラ・マリス学園に通っていた作家パブロ・ビエルチが、事故から36年後に発表した、墜落事故の生存者16人全員の証言を記録した著書が原作。

まず墜落の瞬間の描写がリアルで生々しい。
飛行機の後部が吹っ飛び、後部座席だったものは吹き飛ばされ、前部座席でも骨が折れたり負傷する様もリアル。
その後も雪崩で生き埋めになったり、自然の試練が襲います。
最初は残った荷物の中から食べ物をかき集め分配していましたが、
ラジオで捜索が中止されたことを知り、生きるために人肉を食べることを決意します。

この映画の語り部のヌマ・トゥルカッティは、かなりの期間人肉を食べることを拒否していましたが、
食べた者を非難するのではなく、死体から切り出し、食べ易い様に加工するという辛い役目をしていることを理解し感謝もしていました。
そして、自分が死んだら自分を食べて良いと伝えて亡くなります。

乗客の大半が若く体力もあった為、16人が72日間生き延びられたのでしょうが、
仲間が亡くなっていくのを見届けながら、その仲間を食糧にしなければならない極限。
半世紀の間、重い十字架を担ぎ続けた人たちの祈りのような映画でした。

 

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