連続殺人事件から見えるイスラム社会 『聖地には蜘蛛が巣を張る』(ネタバレ感想)

連続殺人事件から見えるイスラム社会 『聖地には蜘蛛が巣を張る』(ネタバレ感想)

聖地には蜘蛛が巣を張る』を観ました。
デンマーク映画だけど舞台はイラン、実在した殺人鬼サイード・ハナイによる娼婦連続殺人事件に着想を得たクライムサスペンス。

 

Holy Spider 2022年デンマーク/ドイツ/スウェーデン/フランス 118分 R15+

 

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ストーリー

2000年代初頭。イランの聖地マシュハドで、娼婦を標的にした連続殺人事件が起こる。「スパイダー・キラー」と呼ばれる殺人者は殺人の度に新聞社に電話し「街を浄化する」ためと告げていた。住民たちは震撼しつつも、一部の人々はそんな犯人を英雄視。真相を追うためマシュハドへやってきた女性ジャーナリストのラヒミは、事件を覆い隠そうとする不穏な圧力にさらされながらも、危険を顧みず取材にのめり込んでいく。

キャスト

ラヒミにザーラ・アミール・エブラヒミ、第75回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞。
サイードにメフディ・バジェスタニ。他アラシュ・アシュティアニ、フォルザン・ジャムシドネジャドなど。
監督は『ボーダー 二つの世界』のアリ・アッバシ

ネタバレ感想

いつになく雰囲気のある邦題。
冒頭に映るマシュハドの夜景が、蜘蛛の巣のように見えます。

ぶっちゃけ中東の国は、どこにあるのかもよく分かっていないし、国の区別も付いていないのですが、
そこはまあ置いといて、今作はイラン社会が抱える闇について。
この映画の元となった連続殺人事件は、ドキュメンタリーも含めて既に3回映画化されていて、
犯人自身の証言も踏まえて、殺人に至った経緯や犯行後、裁判の行方などリアルに描かれています。
ドキュメンタリーではないので、犯人の心情にも迫り、追いかけるラヒミ記者は実在の人物ではない様ですが、
彼女を通してイスラム社会がどの様なものか分かる作りになっています。

連続殺人事件もショッキングですが、最初から最後まで女性蔑視が酷くて辛い。
貧困から体を売るしかない娼婦を不浄として殺す。
それを社会がほぼ認めていて、警察もろくに動かない。
なぜ体を売らなければいけないほど貧困なのかは考えない。
またラヒミも、社内でのセクハラを告発し逆にクビになりフリー記者へ転向、話を聞きに行った警察署長からもセクハラ、捜査が進まないことに苛立ち、自ら囮となって犯人を捕まえようとするので、ハラハラしながら観ました。

逮捕されてからも社会から英雄扱いさる始末。
観ていて犯人への怒りと共にイスラム社会への怒りも。
2004年にはレイプされた女性は死刑で加害者はムチウチで済んだ例もあり、
女性嫌悪や性差別社会への告発的な内容となっている為、イラン国内からは非難されている様です。

 

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