沈黙は悪いことじゃない 『コット、はじまりの夏』(ネタバレ感想)

沈黙は悪いことじゃない 『コット、はじまりの夏』(ネタバレ感想)

第72回ベルリン国際映画祭で国際ジェネレーション部門グランプリ受賞、
第95回アカデミー賞の国際長編映画賞ノミネートの『コット、はじまりの夏』を観ました。
評判どおりの詩情豊かな作品でした。

 

An Cailin Ciuin /The Quiet Girl 2022年アイルランド 95分

 

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ストーリー

1981年、アイルランドの田舎町。大家族の中で寡黙な少女コットは家庭にも学校にも居場所がなく、孤独と不安を抱えていた。妊娠中の母の負担を減らすため、夏休みを親戚夫婦キンセラ家に預けられたコット。はじめのうちは慣れない生活に戸惑うコットだったが、ショーンとアイリンの夫婦の愛情をたっぷりと受け、ひとつひとつの生活を丁寧に過ごす中で、これまで経験したことのなかった生きる喜びを実感し、自分の居場所を見つける。いつしか本当の家族の様になった3人だったが、母から帰りを促す手紙が届き…。

キャスト

コットにキャサリン・クリンチ、コットが預けられる親戚夫妻のアイリンにキャリー・クロウリー、ショーンにアンドリュー・ベネット、コットの父ダンにマイケル・パトリックなど。

監督・脚本はコルム・バレード

ネタバレ感想

冒頭、牧草の中に隠れている少女。
家族に呼ばれて仕方なく家に戻るも居場所がなくベッドの下に潜る。
ネグレクト気味の兄弟姉妹が4人と母親のお腹の中に1人。
酒と賭け事と浮気もしている父、当然家にはお金がなく、
はぐれ者と言われているコットが親戚の家に預けられることに。
この辺りまでは、観ている自分も辛くて。(。-_-。)

預けられたキンセラ家の様子は、コットの目線で一緒に見ます。
夫婦2人の生活のはずなのに、なぜかコットが着せてもらうお下がりがある。
そもそもコットが使っている部屋は、列車模様の壁紙の子供部屋。
中盤に出てくるデリカシーのかけらも無いおばさんの暴露によって、
夫妻には昔息子がいて、不慮の事故で死んでしまった事が分かります。

コット役のキャサリン・クリンチが素晴らしいですね。
ちょっと大人びて見える時もあるけれど、寝ている時は本当に子供の表情。
実家にいるときは無表情で生気のない目をしているのに、
キンセラ家に預けられてからは、どんどん顔色も良くなり表情も豊かに。
セリフはそれほど無いのに、元気になっているのが見る見るわかります。
順撮りだったという撮影が良かったのかもしれません。

夏が終わり、実家に戻ることになるコット。
キンセラ家の養子にしてもらえないかとか、つい思ってしまうのですけど、
ネグレスト気味だけど、コットの母はコットを愛していない訳ではなく、
父親も娘を預けるのを恥じるプライドはありそう。(プライドだけだけど)
息子を亡くした経験を持つキンセラ夫妻が、子供を奪う様なことを言い出せるはずもなく。
最後に自分の想いを行動で示せたコットに、
良い未来が訪れることを願って観終わりました。

 

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