厳しい現実の中で暮らす人は、朝の美しさに気づいているだろうか 『国境の夜想曲』

厳しい現実の中で暮らす人は、朝の美しさに気づいているだろうか 『国境の夜想曲』

白い牛のバラッド』の後、同じくシネマルナティックで観た『国境の夜想曲』。
イラク、シリア、レバノン、クルディスタンの国境地帯を、3年以上の歳月をかけて撮影したドキュメンタリー。
セリフや説明がほとんど無いので、考えるより先に睡魔が〜( ̄∀ ̄*)イヒッ

NOTTURNO 2020年伊/仏/独 100分

 

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概要

ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』でベネチア国際映画祭の金獅子賞を、『海は燃えている ~イタリア最南端の小さな島~』でベルリン国際映画祭の金熊賞と、それぞれドキュメンタリー映画で最高賞を受賞しているジャンフランコ・ロージ監督が、紛争や圧政、テロに翻弄されてきたイラク、シリア、レバノン、クルディスタンの国境地帯を3年にわたって旅して撮り上げたドキュメンタリー。理不尽かつ凄惨な暴力による深い心の傷を抱えながらも静かに生きる市井の人々の日常を、説明字幕やナレーションを排し、映像のみで淡々と映し出す。

感想

監督が一人で旅しながら「生死を隔てている境界線に沿って生きる人々の日常をしっかり伝えようと思った」という本作。
ナレーションもテロップもなく、治療のために演劇を取り入れている精神科病棟で、患者が演じる祖国を襲った悲劇で、背景が少しわかる程度。この地域の知識がないと置いていかれます。

登場する市井の人々は年齢も国も様々だけれど、弾圧や迫害によって何らかの傷を負っている人々。
サダム・フセインが作った牢獄で息子を亡くした老女たち、自分たちの国を持たないクルド人たちの自治区の治安部隊ペシュメルガで警備する女性兵士たち、シリアに連れ去られた娘からの音声メッセージを聞き続ける母親、ISIS(イスラム国)が行った残虐な行為のトラウマで夜眠れないと語る子どもたち、など。

特に印象的なのはアリという少年。特に貧困が激しいシリアとレバノンの国境地帯に住んでいるアリは、14歳にして家族全員を養わなければなりません。早朝に起こされ漁の手伝いをし、草原で狩りをし、狩猟ガイドなどで日銭を稼ぐ。
(道路端にアリが立っていると車が停まり、1日5ドルでどう?と言われた時は、何をさせる気と焦りましたが、狩のガイドでホッとしました^^;)
アリの諦観のようなまなざしが痛々しい。

油田の炎と銃撃の音が聞こえる中でのマジックアワーの美しさ。
どんな場所にも美しさはあって、それがまた一層切ない気がしました。

これから観られる方は、せめて公式サイトの背景ページくらいは読んでおいた方が良いです。

 

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