手と共に見つめた結末は 『失くした体』(ネタバレ感想)

手と共に見つめた結末は 『失くした体』(ネタバレ感想)

2019年のカンヌ国際映画祭批評家週間でのアニメ史上初となるグランプリ受賞や、アヌシー国際アニメーション映画祭でのクリスタル賞と観客賞のダブル受賞、第92回アカデミー賞の長編アニメーション賞にもノミネートされたフランス製アニメ『失くした体』をNetflixで見ました。
アメリ』の脚本家ギョーム・ローランの原作「Happy Hand」を基に、体から切り離された手が自分の体を探し求めてパリの街を彷徨う不思議な冒険の物語

 

J’ai perdu mon corps 2019年仏 81分

 

Advertisement

ストーリー

パリのとある医療施設から、切断された手が逃げ出した。再び自身の身体とつながりたい手は、身体の持ち主である孤独な青年ナウフェルを捜して、ネズミやハトに追いかけられながらも街をさまよう。手は、何かに触れるたびに記憶がよみがえっていき、ナウフェルの幼少期や、思いを寄せる図書館司書ガブリエルとの思い出が明らかになっていく。

キャスト

ナウフェルにハキム・ファリス、ガブリエルにヴィクトワール・デュボワ、ジジにパトリック・ダスンサオ
監督はジェレミー・クラパン

ネタバレ感想

アダムス・ファミリー』じゃないけど、手首だけが突然保管されていた冷蔵庫から飛び出し、外の世界へ。
なぜ手首が動くのかより、手首は何処へ行きたいのかが気になる。
手首の単身大冒険が始まるのだけれど、道中手首の持ち主だったと思われる青年ナウフェルの生活や、少年時代が少しづつ回想される。
宇宙飛行士かピアニストになりたかったナウフェルだったが、両親が不慮の事故により亡くなったことで遠縁に引き取られ、成長した現在はピザの配達員。配達時に出会った女性ガブリエルに恋をし、彼女の叔父のジジのところで働き始めたことなどが分かる。

少年時代の夢は叶わず、ピザの配達員でさえマトモにできないナウフェル、初めて恋した女性ガブリエルに頑張って接近したのは良いけれど、その告白は気持ち悪がられると心配したとおり、彼女を怒らせてしまう。
極めつけは二日酔いの事故で手首を失ってしまう。
手首がナウフェルの所へ辿り着く頃には、見ている自分も手首の視点でナウフェルを心配している。
ナウフェルが痛ましいとしか思えないんだけれど、最後にあの工事用の鉄橋へ飛び移ったということは、人生の進路を変えようと前向きに決断したのだと思いたい。
ガブリエルが彼に貸した本が「ガープの世界」というのも、なんとなく分かる気がします。

 

Advertisement

映画の旅カテゴリの最新記事