マリアビートルの前に 「グラスホッパー」 伊坂幸太郎

マリアビートルの前に 「グラスホッパー」 伊坂幸太郎

映画『ブレット・トレイン』を観たので、原作の「マリアビートル」を読んでみたいと思っていたところ、職場の読書家が持っていると聞き、借りて読みました。
殺し屋シリーズの前作、「グラスホッパー」も一緒に読んでおきました。
2008年には漫画化され、2015年には日本で映画化もされている程の人気ぶり。

 

「グラスホッパー」 2004年

 

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あらすじ

妻を寺島に殺された鈴木は、復讐を誓い寺島の父親の闇組織に入っていたが、ある日目の前で寺島が車に轢かれ死亡する。寺島を車道へ押した男を目撃した鈴木は「押し屋」の後をつける。
自殺専門の殺し屋の鯨は過去を精算するため、ナイフ使いの殺し屋の蝉は名を上げるため、それぞれ「押し屋」を狙っていた。
「押し屋」の居場所を知っている鈴木は、寺島の父親の組織からも、鯨と蟬からも狙われることに…。

登場人物

鈴木:妻を寺島長男に轢き殺され、寺島父の組織に入り復讐の機会を窺う元数学教師
比与子:鈴木の組織の上司。鈴木が組織に入った目的を怪しんでいる。
蝉:ナイフの使い手の殺し屋
岩西:蝉の上司で仲介人
鯨:自殺専門の殺し屋、過去に殺した者たちの幻覚に悩まされている。
田中:元カウンセラーのホームレス、鯨に亡霊が憑いているのを見て過去を精算するよう助言する。
槿(あさがお):押し屋
スズメバチ:毒を使う殺し屋、1人とも2人組とも言われていて正体不明

ネタバレ感想

いろんなタイプの殺し屋が出てきます。
人を自殺に追い込む自殺屋の「鯨」、交差点などで人を押す押し屋の「槿(あさがお)」、ナイフが得意な「蝉」。
それぞれ個別で接点のない殺し屋たち。
自分の復讐の機会を奪った押し屋の後をつけたものの、槿が本当に押し屋なのか確証が持てず、組織への報告をためらっているうちに、なぜか槿の家族と仲良くなってしまう鈴木。(実の家族ではないことは最後に分かるんだけれど)
鯨は過去を精算して亡霊から逃れるために、かつて仕事で先を越された槿を探し、蝉は名をあげて岩西から独立するために槿を捕らえることを思いつく。
組織も鯨も蟬も、槿の居場所を知っている鈴木を狙う。さあ、どうする鈴木。

ストーリーにはしっかり現代への風刺も入っていて、社会の厳しさや辛さが描かれているものの、殺し屋が何人も出てくる割に殺伐としないし、緊迫感がある場面でもあまり緊張感がなくて、読みやすい。
展開が読めない面白さはしっかりあるし、登場人物の殺し屋たちも、それなりに悩みを抱えていてなんだか憎めない。
槿の家族が只者ではないだろうなと思っていたら「劇団」(裏社会の役者)だったというオチ、鈴木が命を助けたいと思っていたカップルがスズメバチという殺し屋だったというのも読めなかったわ〜。

いろいろ揉まれたけど、鈴木が妻の死を乗り越え、表社会に復帰できたラストも良かったです。

 

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