他人事ではない恐ろしさ 『コレクティブ 国家の嘘』(ネタバレ感想)

他人事ではない恐ろしさ 『コレクティブ 国家の嘘』(ネタバレ感想)

凄い映画でした。
ドキュメンタリーで、真相を追求する記者と追求される側の保健相の両方に密着取材しています。
記者はともかく大臣にカメラが密着するって、どれだけ開けてるんだと思いますが、ルーマニア政権は腐敗していて、それがまた今の日本に重なります。

Colectiv 2019年ルーマニア 109分

 

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あらすじ

2015年10月、ブカレストのクラブ「コレクティブ」でライブ中に火災が発生し、死者27名、負傷者180名を出す大惨事となった。さらに、命を取り留めたはずの入院患者が複数の病院で次々と死亡、最終的に死者数は64名にまで膨れ上がった。調査に乗り出したスポーツ紙「ガゼタ・スポルトゥリロル」の編集長カタリン・トロンタンは、入院した患者が火傷ではなく感染症で亡くなったこと、病院内で使用されていた消毒液の濃度が規定の10分の1に薄められていた事実を突き止める。市民たちの怒りは大規模な抗議運動に発展し、当時の政権与党出会った社会民主党は退陣へと追い込まれた。
新しく保健相となったヴラド・ヴォイクレスクは、腐敗まみれのシステムを変えようとするが、圧力や妨害により思うように進められない。
トロンタンは内部告発により、事件の背後に製薬会社と病院経営者、政府関係者の巨大な癒着があることを知り、命の危機を感じながらも、真相を暴くため調査を続けるが…。

ネタバレ感想

こんなドキュメンタリーが撮れるんだと感心しました。
真相を追う記者と記者に追求される側の大臣の双方に密着。
というのも、大臣の方も前政権時代の不祥事の真相を暴き、国民のために良い環境を整えようという志を持っているため、共通の目的があるわけですが、それぞれの方法で真相へ迫っていきます。

観ていると、セリフが心に響く響く。
トロンタンの「メディアが権力に屈したら、国家は国民を虐げるのです」
日本のメディアに聞かせたい。

一度は政権を引き摺り下ろした国民も、次の選挙ではまた前政権の社会民主党を当選させてしまう。
それがまた投票率の低さからというところも、先の日本の選挙を思い出させます。
選挙後のヴォイクレスクの父親の言葉がまさに自分の気持ちと一緒でした。

ナレーションやインタヴューもなく、観客の自分も当事者として現場にいるかの様に事実だけを映すカメラワーク。
まるでサスペンス映画を見ているようで、本当にドキュメンタリーなんだろうかと疑うくらい。
たくさんの方に観てもらいたい映画です。ぜひ。

監督・撮影は『トトとふたりの姉』のアレクサンダー・ナナウ
アカデミー賞では国際長編映画賞・長編ドキュメンタリー賞の2部門ノミネート。

 

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