何を・誰を信じれば良いのか 『聖なるイチジクの種』(ネタバレ感想)

何を・誰を信じれば良いのか 『聖なるイチジクの種』(ネタバレ感想)

映画を制作した為に母国イランで実刑判決を受けドイツへ亡命したモハマド・ラスロフ監督の『聖なるイチジクの種』を観ました。
話自体はフィクションですが、実際の映像が挟み込まることもあり、ドキュメンタリーのような緊迫感がありました。

 

The Seed of the Sacred Fig 2024年仏/独/イラク 167分

 

Advertisement

 

ストーリー

ヒジャブのつけ方を理由に拘束され亡くなったマフサ・アミニの事件を契機に、全国的に抗議運動が過熱する2022年のイラン。政府当局は武力でもってデモ参加者を弾圧していた。
裁判所で調査員として政府のために働くイマンは昇進し、護身用にと国から一丁の拳銃を支給される。しかし、家で保管していたはずの拳銃が、ある日消えてしまう。イマンは、家にいる妻のナジメと2人の娘レズワンとサナに疑いの目を向け問いただすが、誰もが盗んでいないと言い張り…。

キャスト

革命裁判所の職員のイマンにミシャク・ザラ、妻ナジメにソヘイラ・ゴレスターニ、長女のレズワンにマフサ・ロスタミ、次女のサナにセターレ・マレキ、レズワンの親友サダフにニウシャ・アフシなど。
監督は『悪は存在せず』のモハマド・ラスロフ

ネタバレ感想

冒頭で、タイトルのイチジクが他の木に絡みついて成長するという説明が流れますが、そこですでに一体何が起こるのかと怖くなりました。

仕事と信仰に一途で真面目な家長のイマン、夫に従順で献身的な妻ナジメと2人の娘の一家。
裁判所で働くイマンは、抗議活動での逮捕者をろくに調べずに刑を言い渡すことを躊躇し葛藤しますが、結局は上司の検事の言いなりに死刑の判決文を作成します。
家庭を守りたいナジメは、TVが流す抗議活動への批判を鵜呑みにし、夫を励まし娘たちには危険な事には近寄らない様釘を指しますが、TVではなくネットで流れる実録の映像を見ている娘たちは取り締まる警官達への不満を募らせています。
そんな中護身用に支給されたイマンの銃が家庭内で失くなったことで、イマンの理性が崩れます。

世代によって考え方や信じるものが違うということ、特に娘2人はマフサ・アミニと世代も近く、彼女が警察によって殺されたと信じています。抗議活動をする者に近い存在。
取り締まる側のイマンは、最初は刑を言い渡すことを躊躇していましたが、次第に体勢に流され、娘達との間には大きな溝が。その溝を埋める存在だったナジメでしたが、ナジメ自身も夫も娘を信じられていない状況。

銃を失くしたことによって、刑を言い渡される側になることに怯えたイマンは豹変し、家族に対して信じられない行動に出ます。
何を・誰を信じるのか、家族とは何なのかと考えさせられました。
決して人ごととは思えませんでしたね。

 

Advertisement

映画の旅カテゴリの最新記事