変わりゆく故郷へのノスタルジー『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』(ネタバレ感想)

変わりゆく故郷へのノスタルジー『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』(ネタバレ感想)

最近ではすっかりミニシアター系のシネコンとなっていた大街道シネマサンシャインが、施設老朽化のため来年1月末で閉館する事になり、慌てて駆けつけ2本。

1本目に観たのは、オバマ前大統領が2019年のベストムービーの1本に挙げていた『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ

ミニシアター系って、観た感想がふうんで終わる事も正直多々有るのですが、『ノッティングヒルの洋菓子店』を観るつもりを土壇場で変更したのが、果たして正解だったのか?

 

THE LAST BLACK MAN IN SAN FRANCISCO 2019年米 120分 PG12

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ストーリー

主演のジミー・フェイルズの自伝的物語を、フェイルズの幼なじみのジョー・タルボット監督が映画化。サンダンス映画祭の監督賞、審査員特別賞を受賞

急速な発展によって地価が高騰し、再開発によって先祖代々住んでいた人達が追い出され、富裕層が住む街になってしまったサンフランシスコ・フィルモア地区にあるビクトリアン様式の美しい家。ジミーは父親が手放した祖父が建てたこの家を愛していた。ある日現在の住民が手放すことになったことを知ったジミーは、勝手に住み着いてしまう。

キャスト

ジミーにジミー・フェイルズ本人、親友のモントにジョナサン・メジャース、モントの祖父にダニー・グローヴァー、他ティチーナ・アーノルド、マイク・エップスなど。
ソーラ・バーチがチラッと出ています。
監督はジョー・タルボット、製作プランB、配給A24

ネタバレ感想

バスがなかなか来ないのでスケボーでサンフランシスコ中心部へ向かうジミーとモントのシーンが、やけにスタイリッシュでカッコ良くて、掴みはOK。
さすがプランB製作と思ったら、住民の留守中にいきなり他人の家の修理を始めるジミーに何が何やらさっぱり。

どうやら、ジミーが修理している家はジミーの祖父が建て、幼い頃は住んでいた家らしい。それなら思い入れがあるのも分かると思っていたら、もう一捻りありました。
今では黒人や低所得者は中心部から追い出され、環境汚染地域へ追いやられてしまっている様。冒頭の防護服に身を包みゴミ拾いしている収集員や、4つ目の魚(これはアニメ「ザ・シンプソンズ」のパロディかと思ったけれど、笑える様な雰囲気もなく)はその象徴みたい。

ジミーはどうやら家主が不在になった間に勝手に住みついて住居権みたいなものを主張しようとしている様だけど、とにかく豪邸(パイプオルガンがある家なんて!)で、本当にお祖父さんがが建てたのか怪しいな〜と思っていると、やはり違ってました。

友人が突然ケンカで殺された事へのショックと、ジミーの家への執着を心配したモントが書き上げた芝居が、大作かと思えばかなり短かったり、思わせぶりに出てきた母親もそれっきりだったりと、劇的になりそうでならないところは、人生そのものなのか。

サンフランシスコの移り変わりや、環境問題、人種差別などのメッセージを盛り込んだ、青年の友情と成長譚ってところでしょうか。

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