従順な奴隷から抜け出すためには 『ザ・ホワイトタイガー』(ネタバレ感想)

映画の旅

第93回アカデミー賞脚色賞ノミネート作品。
虎の話ではありません。(チラッとは出てくるけど)

THE WHITE TIGER 2021年米/印 132分

ストーリー

インドの貧しい村で生まれ育ったバルラムは、貧困から抜け出すことを夢見て、裕福な一家の次男付きの運転手の職を手に入れる。持ち前のずる賢さで主人アショクと妻ピンキーの信頼を得るバルラムだったが、ある事件をきっかけに主人夫妻との関係に亀裂が。ようやくバルラムは、これまでの奴隷のような人生から抜け出すことを決意する。

キャスト

バルラムに『エイリアン・アース』のアダーシュ・ゴーラブ、富豪の次男アショクにラージクマール・ラーオ、アメリカ育ちのアショクの妻ピンキーに『マトリックス レザレクションズ』のプリヤンカ・チョープラー、他マヘーシュ・マーンジュレーカル、ビジャイ・モーリャなど。
監督はラミン・バーラニ

ネタバレ感想

イギリスの文学賞ブッカー賞を受賞したアラビンド・アディガの小説「グローバリズム出づる処の殺人者より」が原作。
今なお根強いインドのカースト制度とその中で成り上がる青年の話。サクセスストーリーというより、インド社会の構造に焦点を当てた社会派ドラマ。

主人公バルラムは子供の頃から勉強ができ、教師から「ホワイトタイガーだ」と言われるものの、一家の長の祖母の命令で学校を辞めて働かされます。大人になり、そんな生活から抜け出したいバルラムは、祖母と交渉し自動車免許を取得、富豪の家の第二運転手として雇われます。
次男が都会デリーへ行くことになり、第一運転手がクビになるようし向け、次男の運転手としてデリーへ、そこで事件が起こります。

世界第1位の人口を持つインド、この映画が作られた頃のGDPは世界第5位、都市化と中産階級化を進めていますが依然地域間格差、所得格差が大きい。
地方の貧しい村で育ったバルラム、祖母に働かされ若くして亡くなった父を見ていた彼はその境遇から抜け出そうとしますが、兄は祖母に言われるまま嫁を取り働き貧困生活から抜け出そうという意欲もありません。貧しくて働くことに追われ、何も考えられない状態は、まさに従純な奴隷。
今の日本も同じように感じます。

野心的で抜け目ないなバルラムでさえ使用人の立場に慣れ、理不尽なことをされてもなかなか抜け出す決心がつかない。
金持ちは賄賂を使いより金持ちになるのを見て、ついに行動を起こし、金持ちのやり方で成功します。その起こした行動に対して後悔もしていない、その行動によって家族に起こった事にも胸を痛めない。以前からはすっかり別人になってしまったバルラム。
恐ろしいと思うけれど、彼を責める気にもならず。
なんとなく山上徹也を想像しました。

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