無理だと思いつつ、自由と孤独への憧れも 『ノマドランド』

無理だと思いつつ、自由と孤独への憧れも 『ノマドランド』

ロードムービー好きなので期待していたノマドランド』を公開初日のレイトショーで観ました。
広大なアメリカを車で巡り、素晴らしい大自然の景色を堪能できる映画でしたが、内容は旅ではなく人生でした。

NOMADLAND 2020年米 108分

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ストーリー

アメリカ・ネバダ州に暮らす60代の女性ファーンは、夫を病気で亡くし、リーマンショックによる企業の倒産で住み慣れた家も失ってしまう。必要最低限の荷物をRV車に積み込み、車上生活をしながら季節労働の現場を渡り歩く。
現代の「ノマド(遊牧民)」として日々を乗り越え、出会う仲間たちと苦楽を共にし、ファーンは広大な西部をさすらう。

キャスト

ファーンにフランシス・マクドーマンド、原作に衝撃を受け映画化権を手に入れ、製作と共に主演女優として実際にファーンの様な生活をして撮影に臨んだそう。
デイブにデヴィッド・ストラザーン
その他のキャストは実際にノマド生活をしている皆さん本人。
監督は『ザ・ライダー』のクロエ・ジャオ。

感想

ジェシカ・ブルーダーが2017年に出版したノンフィクション「ノマド 漂流する高齢労働者たち」を原作。
リーマンショックやサブプライム住宅ローン危機などによってもたらされた経済の衰退により家を失った人々が、”現代のノマド(遊牧民)”と呼ばれる車上生活をしている。車もキャンピングカーだったりプリウスだったりと様々。
クロエ・ジャオ監督が、『ザ・ライダー』と同じ様に本人(実際にノマド生活をしている)を起用して、ドキュメンタリーではないものの、リアルな実態を美しい映像の中で描いています。

ブログ名を”旅の空”とつけるくらいだから旅は好きです。
ストレイト・ストーリー』『イントゥ・ザ・ワイルド』など、印象に残るロードムービーは切なさや悲劇が伴っている気がします。

最初はこういう生活も良いかもな〜と思いました。
壮大な自然、知らない町での初めての経験の数々、好きな場所を好きなタイミングで巡る自由さ。
実際はトイレ一つとっても大変なのだろうけれど、なんとかなりそうな知恵や工夫、役立つ情報を教えてくれるノマド仲間たちも居る。
しかし、同じ生活が2週目に入ったのを見て、無理だと感じました。
自分にとっての旅は現実からの解放であり自由になれる時間。
1週目なら旅気分でやれるけれど、2週目からは人生になってしまう。
それを続けて生活している彼らは、そうする以外の選択肢が無い人が多いのでしょう。
劇中でボブの言う「”さよなら”のかわりに”また路上で会おう”と言う」のは、良い様にも聞こえるけれど、
そう言う人生が続くと言うこと。
それでも前向きに過ごそうとする逞しさもあります。

外国の旅先で、旅で訪れた土地に住み着いてしまう人達を見てきました。
自分も友人から、もう帰ってこないんじゃないかと言われたこともありますが、自分にとっては帰る家があってこその旅でした。
アラ還の独身、火事などで家を失ったら、家族が居なくなったら、
自分だったら孤独に向き合えるのかと考えずにはいられない映画でした。


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