舞台の幕が上がる 『ジョーカー』(ネタバレ感想)

舞台の幕が上がる 『ジョーカー』(ネタバレ感想)

ジョーカー』、ホアキン・フェニックスが演じるジョーカーってなんだか凄そうと思っていたら、絶賛のレヴューも多くてとても気になっていたので初日レイトで鑑賞。
これはじわじわくるヤツですね。第76回ヴェネツィア国際映画祭で最優秀作品賞にあたる金獅子賞を受賞。

JOKER  2019年米 122分 R15+

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常に主役より注目されるヴィラン、ジョーカー

ジョーカーはDCコミックスのヒーロー、バットマンのスーパーヴィラン。
過去の映画でも常に話題のキャラクター。

バットマン』(1989)
バットマンはマイケル・キートン。実写版映画初のジョーカーは、事故によって肌が漂白され顔が笑ったように引きつっているという設定。ジャック・ニコルソン程の大物がアメコミ映画のヴィランというのにも驚きましたが、その存在感と禍々しさ、でもまだ笑えるキャラでした。

ダークナイト』(2008)
クリスチャン・ベール・バットマンのジョーカーは口が裂けたピエロのメイクをした男。悪というより純粋な狂気というイメージでした。ヒース・レジャーは主要な映画賞の賞を総なめ、アメコミベースの映画での快挙となりました。

スーサイド・スクワッド』(2016)
ジャレッド・レトの演じたジョーカーは、全身タトゥーのギャングのボス、サイコパスの犯罪者という設定。バットマンはベン・アフレック

一味違うキャストたち

のちにジョーカーと名乗るアーサー・フレックを演じるホアキン・フェニックスを最初に観たのは『誘う女』(1995)で、リバー・フェニックスの弟とは思えない、役同様に本当に知能が低いのではと思わせるリアルな演技でした。以降も一癖ある演技に定評があります。
母ペニーにフランシス・コンロイ、同じアパートのソフィーにザジー・ビーツ
トーマス・ウェインにブレット・カレン、ブルースの父トーマスは町の名士にしては骨太な強面、ダグラス・ホッジ演じる執事のアルフレッドも同じタイプで、過去作では紳士の見本の様だったアルフレッドが一転。
刑事役でビル・キャンプシェー・ウィガムなど。
監督は『ハングオーバー』シリーズのトッド・フィリップス

ロバート・デ・ニーロの存在

ロバート・デ・ニーロが演じるのが、人気コメディアンで看板番組のホストのマレー・フランクリン。彼が演じた『キング・オブ・コメディ』(1982)のパンプキン。また、社会から忘れられた孤独が次第に狂気へ変わっていった『タクシー・ドライバー』(1976)のトラヴィスにアーサーが重なるというキャスティング。

ネタバレあらすじ&感想

クリストファー・ノーラン監督のバットマン3部作を観た時も、以前のバットマンシリーズに比べるとグッと現代的になってきたなと思いましたが、今作はよりリアル。
財政難で格差が広がったゴッサムシティでは、作業員のストによりゴミの収集がされず、街は道路にゴミが溢れ悪臭が漂っています。市長に立候補しようとしているトーマス・ウェインも街を良くしたいと言っていますが、格差は容認。現実にもありそうな社会。
ピエロのパフォーマンスで生計を立てているアーサー・フレックは、突発的に笑い出す発作があり市の福祉センターで毎週カウンセリングを受け薬を処方してもらっています。発作から気味悪がられ、職場でも社会でも虐められる生活。
コメディアンになるという夢を支えに生きていますが、仕事を失い、父親だと思ったトーマスに殴られ、母にも虐待されていた過去、大好きなマレーに馬鹿にされ、ソフィーと付き合っていたのも妄想だと分かり、とうとう溜まっていた鬱憤が噴出します。

笑っているのか泣いているのか分からないアーサーの笑い方、生気がなかった眼に殺意が宿り、抑える事をやめ魂を解放し自信を取り戻した姿、階段のダンスシーンで活き活きとした彼を見て逆にホッとしてしまいました。

音楽も主題歌であるジミー・デュランテの”smile"は切なく、挿入歌もその時々の気持ちが反映されていて印象的。コチラの記事が詳しいです。

最後に病院のシーンが映る事で、全てがアーサーの妄想だったのかもという解釈をする方も。
トーマス・ウェインを殺したのがアーサーでなかったこともポイントの一つかも。
解釈は観る側に委ねられた感じですね。

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