意味深なラスト 『白い牛のバラッド』(ネタバレ感想)

意味深なラスト 『白い牛のバラッド』(ネタバレ感想)

ネットで話題になっていて気になっていた『白い牛のバラッド』をシネマルナティックで観ました。
今も死刑制度があるイランで、冤罪によって夫を亡くした主人公が、社会の不条理に翻弄されるサスペンス。
本国イランでは上映中止となっています。

BALLAD OF A WHITE COW/Ghasideyeh gave sefid 2020年イラン/仏 105分

 

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ストーリー

1年前に夫が殺人の罪で死刑に処せれられたミナ。未亡人のシングルマザーとして牛乳工場で働きながら、聴覚障害を持つ娘と暮らしていた。ある日、裁判所から真犯人は別にいたことが判明したと告げられ、ミナに賠償金が支払われるという。納得できずに担当判事の謝罪を求めるも、まったく取り合ってもらえない。絶望と無力感に打ちひしがれる彼女の前に、夫の旧友だという男性レザが現れ、ミナたちを助けてくれるのだったが…。

キャスト

ミナにマリヤム・モガッダム、レザにアリレザ・サニファル、ビダにコーダのアヴィン・プールラルフィ
監督はミナを演じたマリヤム・モガッダムとパートナーのベタシュ・サナイハ

ネタバレ感想

冒頭、刑務所内の広場、左の壁際に黒い服を着た男たち、右の壁際に黒い服を着た女たちが並び、中央に白い牛が立っているシーンに驚きます。この牛は、生け贄、冤罪の象徴らしい。
殺人罪で夫が死刑になり、牛乳工場で働きながら娘ビタを育てているミナ、楽ではない暮らし。
1年後に夫が冤罪だったことを告げられるが、裁判所は自分達の過失は認めない。
納得がいかないミナの前に、亡き夫の知人だというレザが現れ、生前に借りていたというお金を返してくれる。
実はレザは夫を死刑にした判事の一人で、罪の意識からミナを助けたいと思っての行動だったが、自分の素性は明かせなかった。
何かと親切にしてくれるレザにビタも懐き、ミナも心を開いていく。

実は、監督で主演もしているマリヤム・モガッダムの父親が政治的理由で死刑となり、母親の名前がミナで、母親の実体験を元にして作られている。
日本と同じく死刑制度があるイラン。冤罪もまた神の思し召しだとして謝罪はしない。
イラン人女性の立場は弱く、夫以外の男性を家へ入れただけでアパートを追い出され、未亡人だと部屋も借りられない。
人前でヒジャブを脱ぐことも許されない。
聴覚障害の娘は、声を発することができない、意見を言ったとしても誰にも聞いてもらえない、イラン人女性の象徴ということらしい。

レザと彼の息子の不和の理由が分からなかったのと、ラストの意味。
贖罪と赦しの話ということなので、ミナは一線を越えてないのでしょうか。(牛乳で人が死ぬとも思えないし)
それとも…。

 

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